健康食品の危険性とは?マウスを使った実験手法③

外国のお土産が日本の食品基準に合っていないから食べない、などというのはもったいないですし、時には旅行先でその土地の名物を楽しむのもいいでしょう。

災害用の保存食やインスタント製品だってたまには食べるでしょう。

いろいろなものが手に入るというのは安全性にとっても大切なことなのです。

逆に「地産地消」「こだわりの食生活」のようなもので特定の産地のものしか食べない、あれはダメこれもダメと選択肢を狭めるようなことをすると、たとえ栄養不良にはならないとしても思いもよらないリスクが高くなっている可能性はあります。

産地にこだわるという人でもその土地や農作物の重金属濃度を知っている人はほとんどいないでしょう。

もちろん現状で目に見える健康被害があるものへの対策は優先的に行うべきで、その上でリスクの大きさに応じて順次対策していくものです。

リスクがわからない、というのは明確に認知できるほど大きなリスクではないということでもあります。

食品の安全性の基本となっているのは食経験とリスク分析で、リスク管理のための最良の方法は、リスク分散のために特定のものだけを食べずいろいろなものを食べるということである、ということを覚えておいてください。

いわゆる健康食品とは?いわゆる健康食品とよばれるものがありますが、見ためはカプセルや粉末などであっても、ふつうの食品です。

食品の安全上の問題として常に名指しされる食品添加物や残留農薬に比べると圧倒的にリスクが高い健康食品を、一般の人たちがほとんど警戒していないというのはとても不思議なことです。

44図9に示すように、残留農薬や食品添加物は、動物実験で有害影響の出ない量の100分の1以下になるように1日許容摂取量(ADI)が設定されていて、実際に使用されて食べる量はそれよりさらに少ない量です。

このときの「有害影響」には体重の増加抑制というものもあります。

45一方いわゆる健康食品になると、動物で体重の増加抑制(つまり有害影響)が出る量を、効果がある量として喜んで摂取しているのです。

同じ物質であっても「食品添加物」と表示されれば微量でも恐ろしいものとみなし、「サプリメント」と表示すればたくさん使った方がいいような気がする、という「直感的」行動では安全性は守れないことをしっかり認識してほしいと思います。

「いわゆる健康食品」ではありませんが、有機栽培あるいはオーガニック認証された農産物を普通に栽培された農作物より「健康に良い」と宣伝している場合があります。

また健康に気をつけているのでオーガニックを選んでいるという人たちもいます。

しかし食品の安全という観点から、有機栽培のほうが優れているということはありません。

有機栽培の宣伝で強調されるのは慣行(普通の)栽培より農薬の使用が少ないので残留農薬が少ないということですが、もともと残留農薬は食品そのもののリスクより小さくなるように設定されていますので、きちんと指示通りに使えば無視できる程度の小さなリスクにしかなりません。

46一方で有機栽培の場合には、農地にある程度の雑草が生えたり虫がいたりすることはむしろ望ましいことだとみなされていることもあり、穀物の場合には慣行栽培よりカビ毒汚染が多く、有毒植物の混入がしばしば報告されています。

たとえば2014年にはスイスのホレ社のオーガニックベビーフードにナス科の植物に含まれるアトロピンとスコポラミンが人体への影響が出る量検出されたため、リコールされています。

この製品については少量ですが日本にも輸入されていたようです。

ホレ社のオーガニックベビーフードは、2012年にもカビ毒であるオクラトキシンAのためにリコールされています。

日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、オーガニック卵は鶏をケージに閉じこめて飼育してはいけないことになっているので、ある程度自由に歩き回れるようにしています。

しかし鶏を放し飼いにするとその卵には環境中に存在する鉛やダイオキシンなどの有害物質の濃度が高くなることが報告されています。

鶏は地面に落ちている石ころなどを飲み込んで貯める習性があるのでケージで飼われている場合よりいろいろなものをもちこみやすいからです。

天然物にも毒物はたくさんあるので、より自然に近いから安全だということはなく、自然の脅威から守るために人間が手をかけている場合も多いのです。

赤ちゃんには安全なものを食べさせたいと思うのは当然ですが、食品についての全体的で正確な知識が欠けた「思い」だけでは安全なものを選ぶことはできないのです。

次に問題となるのは「食品と医薬品の間」です。

医薬品の安全性の考え方と食品の安全性の考え方には違いがあり、それにどう折り合いをつけるのかを3章でみます。

その前に食品の安全性についての事例を見てみましょう。

47食品による健康被害の事例事例1――スギヒラタケこれまで食べてきて特に問題になることはなかったから食べても安全だと判断することを「食経験」によって安全性が担保されているといいます。

ところが「食経験」というのはそれほど信頼性の高いものではなく、単に有害影響に気がつかなかっただけだったということが健康被害が出てわかる、ということがあります。

その典型的な例がスギヒラタケによる急性脳症です。

スギヒラタケは、8月から10月頃にスギ、マツなどの針葉樹の切り株や倒木によくみられるキノコで、東北地方などで「食べられるキノコ」として食べられてきました。

しかし2003年以降、主に秋田県や新潟県を中心に透析患者でスギヒラタケを食べたことによる急性脳症による死亡事例が報告されるようになりました。