健康食品の危険性とは?マウスを使った実験手法④

最初のうちは透析患者に特異的におこると考えられていましたが、透析患者でなくとも急性脳症になった事例が報告されたため、スギヒラタケは一般の人も含めて食べないように、という助言が厚生労働省や農林水産省から出されています。

2003年に偶然に透析患者で多数の症例が出たため(約60名が発症、そのうち19名死亡)注目されるようになり、よくよく調べてみると実はそれ以前からスギヒラタケによる急性脳症はあったようだ、ということがわかってきたのです。

キノコのような季節限定のものは食べる機会がそれほど多いわけではなく、キノコの中毒症状としての急性脳症がそれほど一般的に認識されているわけでもないので結びついていなかっただけのようです。

「食経験」の根拠である「昔」は今より平均寿命も短く透析をしつつ長生きしているような、毒性影響が現れ48やすい人たちが少なかった、ということも気づかなかった原因かもしれません。

事例2――スターフルーツ横断面が星の形になるスターフルーツという南国の果物があります。

アジア原産で、果物としてもジュースとしても食べられてきたものです。

しかし腎障害のある人がスターフルーツを食べたあとで神経症状をおこし腎機能の低下や死亡したという症例が1990年代にいくつか報告されています。

特徴的な症状としてしゃっくりが止まらない、精神錯乱、発作といったものがあり、中枢神経系に作用する物質が含まれていることが疑われました。

スターフルーツにはもともとシュウ酸が多く含まれるため、シュウ酸が原因物質として疑われましたが、他のシュウ酸を多く含む食品ではそのような症例は報告されておらず、シュウ酸が症状の悪化に関係する可能性はあるとしてもシュウ酸だけでは説明できません。

そこで研究者らはスターフルーツに含まれる神経毒素を探しました。

比較的最近の2013年になって、カランボキシン(Caramboxin,スターフルーツの学名Averrhoacarambolaに由来)という毒素が同定され、これがスターフルーツによる急性脳症の主要原因だということがわかってきました。

カランボキシンはアミノ酸のフェニルアラニンによく似た化学構造をもつアミノ酸の一種(図10)で、強力な神経細胞興奮作用があり、ラットに投与すると脳症と腎障害を誘発することが確認されています。

49つまりスターフルーツにはこのような毒素が含まれるため、腎障害のある人はもちろん、健康な人であっても食べない方がいい、ということが最近になってわかったのです。

このように食経験があったとしてもそれが高い安全性を保証するものではないのです。

人は高齢になるといろいろな機能が衰えていくのが当然だと考えられていますが、たとえば腎機能が低下する理由の一つはカランボキシンのような天然の食品中に含まれる毒素による可能性があります。

私たちは食品中に含まれる化合物のすべてを知っているわけではないので、わかったことについてその都度対処していくしか方法はありません。

すべての食品にはもれなく有害物質が含まれる、ということを前提にして、特定のものに偏ることなくいろいろな食品を食べましょう、というアドバイスは、こういう未知の有害物質によるリスクを減らすためのものなのです。

事例3――アマメシバ普通の食品であっても「健康食品」として使用した場合には死亡を含む重大な健康被害が起こりうることを象徴する事例がアマメシバです。

この事例はいわゆる健康食品について考えるときには必ず念頭に置くべきもので、くり返し50取り上げる必要があります。

アマメシバ(学名:サウロパス・アンドロジナス)はインド、マレーシア、インドネシア、中国、ベトナムなどで野菜として食べられていたもので、炒めたりスープに入れたりといった加熱調理をしてから食べるものでした。

それが1982年ごろ台湾で、やせる効果があると宣伝されて急激に販売量が増え、1994年から95年にかけてアマメシバの摂取と関連が疑われる肺機能障害の事例が多数報告されました。

被害者の多くはダイエット目的でアマメシバをジュースなどにして摂取していて、1996年の台湾衛生署の報告によれば患者数は278人、そのうち9人が死亡して8人が肺移植を受けたとあります。

アマメシバは1996年ごろに沖縄で栽培されるようになり、2003年にアマメシバ加工品の摂取に関連すると考えられる重症の肺疾患患者が日本でも報告されたため、厚生労働省はアマメシバ加工品の販売を禁止します。

その後の調査で明らかになった日本人の被害者は8人で、そのうち3人が死亡、1名が肺移植をしています。

被害者は全員女性で、死亡者の中には20代という若い人も含まれます。

もっとも少ない量ではアマメシバの総摂取量が300グラムで発症しています。

このうち被害者が裁判を起こしたため、使用の経緯がある程度明らかになっている事例を紹介します。

被害者のうちの二人(母と娘)がアマメシバを健康食品として使用するようになった理由は、主婦の友社(現在、主婦の友インフォス情報社)が発行する雑誌『健康』に掲載された「新・特効野菜【あまめしば】の大評判効果」という特集を読んだためでした。

特集の内容はアマメシバがいかに素晴らしいかというもので、いろいろな人の体験談を載せてそれに対して「医学博士」である山ノ内慎一博士がコメントを加える、という形式でした。

「末期ガンから元気に回復」という体験談に対して、51「回復されたのは【あまめしば】に豊富なβ-カロチンの抗酸化作用やビタミンやミネラル類の肝臓機能を高める作用によるものと考えられます」とコメントがあり、「便秘が解消。

自然にやせて17㎏のダイエットにも成功した」という体験談に対して、「【あまめしば】によって便秘が解消したため、体力・気力ともに充実してきたのでしょう。